インターネットの普及・発展に伴い、ネット上の誹謗中傷によるトラブルが増加しています。誤った情報の拡散や悪意のある書き込みは、今日の企業にとっては無視できないリスクの1つです。放置しておけば企業のイメージ悪化などを引き起こし、事業にダメージを与えることすらあります。もし、このような書き込みを発見した場合は、被害を最小限に抑えるためにも早めに手を打つことが重要です。
当該情報の削除請求
問題のある書き込みの存在を察知した場合、まず行うべき対策は当該書き込みを速やかに削除することです。そのための手段としては次のようなものがあります。
削除フォームによる削除
サイト側に削除依頼フォームなどが準備されている場合は、それを利用して運営者に削除を依頼しましょう。ただ、たとえ削除を依頼しても、サイトによって対応に差がある点には注意が必要です。
ガイドライン・利用規約に沿った削除
サイト独自のガイドラインや利用規約がある場合には、それに違反した書き込みの削除を求めることもできます。
ただし、サイト側の判断によっては削除されないおそれもありますので、その場合はまた別の方法を考えなければなりません。
プロバイダ責任制限法を使う方法
プロバイダ責任制限法3条に基づいて、運営元のプロバイダに送信防止措置依頼を行い、当該情報の削除を求めることもできます。
仮処分の申請
サイトの管理者やプロバイダが任意の削除に応じない場合は、裁判所に削除を求める仮処分を申し立てることになります。仮処分申請は訴訟を提起する場合よりも迅速な解決が期待できますので、悪意のある書き込みの削除のような一刻を争う事態に対処するにはおすすめの方法です。
発信者情報開示請求
もし当該書き込みによって何らかの損害が発生した場合は、削除請求をするとともに損害賠償請求も行います。そのとき、必ず行わなければいけないのが発信者の特定です。
誰が書き込んだか分からない状態では、発信者に責任を問うことはできません。そこで、サイト管理者やプロバイダに問い合わせをし、発信者情報を開示してもらう必要があります。
書き込みによる被害者はプロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報開示請求を行うことができます。もしサイト管理者が任意の開示に応じてくれない場合には、裁判上の手続きに移行して開示を求めることになります。
サイト管理者に対する情報開示請求
サイト管理者が任意に情報開示請求に応じなかった場合には、裁判所に仮処分の申し立てを行い、発信者のIPアドレスやタイムスタンプといった発信者情報の開示を受けます。
プロバイダに対する情報開示請求
発信者のIPアドレスが分かったら、その情報を元に発信者が利用しているインターネットプロバイダを特定します。そして、このプロバイダに対して発信者情報開示請求を行い、契約者である発信者の住所や氏名、メールアドレスの開示を求めます。なお、このプロバイダに対する情報開示請求は、原則として訴訟によって行うことになります。
慰謝料の請求
情報開示請求によって発信者の特定ができたら、今度は発信者に対して損害賠償請求訴訟を提起し、慰謝料などを請求していくことになります。
ここまで見てきたように、ネットの誹謗中傷問題の解決には、仮処分申請や訴訟といった法的手続きが不可欠です。早期解決・被害の拡大防止のためにも、早めに弁護士に相談することをおすすめします。