企業の健全な発展を図る上では、社内のコンプライアンスを徹底し、また風通しの良い職場環境を作ることが大切です。そうした試みの1つとして、コンプライアンス違反の早期発見に役立つ内部通報制度があります。
内部通報制度の必要性
内部通報制度とは、社員・職員などが、所属組織の法令違反や規則違反、不正行為などについて組織内の相談窓口に匿名・実名で相談・通報することをいいます。
内部告発との違いは、内部告発がマスコミなど組織の外部に告発を行うのに対し、内部通報制度はあくまでも組織内での相談・通報となる点です。そのため、もし組織内で何らかの問題が発生したとしても、組織内ですぐに対処できる可能性が高くなります。
もし内部告発が行われれば会社の社会的評価にも悪影響を与えかねません。内部通報制度が適切に整備・運用されていれば、こうした内部告発のリスクを抑えることができます。
さらに、内部通報制度には、不正行為の早期発見・早期対処につながる、自浄作用のある企業として評価されやすいなどのメリットがあります。
内部通報制度の導入
内部通報制度の導入を成功させるためには、いくつか守るべきポイントがあります。
・秘密保持の徹底
もっとも重要なのが、秘密保持の徹底です。通報者の氏名や所属部署などはもちろん、通報内容や通報があったこと自体も秘密にする必要があります。これは、内部通報したことが他の社員にわからないようにして、通報者を守るためです。
なお、この秘密保持の徹底という視点は、実際に相談窓口を整備する際にも重要になります。担当者以外の人に話し声が漏れたり、誰が面談にきたのかわかったりするような環境では、通報者の秘密を守ることはできないからです。
・不利益取り扱いの禁止
内部通報したことで通報者が不利益な扱いを受けないように、内部規定で不利益取り扱いの禁止についても明文化しておく必要があります。
・独立した相談窓口の設置
通報窓口が経営幹部とは独立した部署であることも大切な前提条件です。これは内部通報が、経営陣が関与しているような不正に関連して行われるケースもあるためです。
内部通報制度の運用
内部通報制度の運用を成功させるためには、通報後の対応が重要になります。通報の内容を公正に判断し、もし調査が必要となったら迅速に行動することが、社員からの制度への信頼を勝ち取ることにつながります。
また、社内に対して内部通報制度の周知徹底をすることや、弁護士を始めとする専門家との連携、通報者へのフォローアップなども内部通報制度の健全な運用には必要となってきます。
専門家の助けも必要に
企業にもコンプライアンス経営が求められる中、内部通報制度の重要性は増しています。組織内の不正行為に伴う様々なリスクを抑えるためにも、効果的に運用することが求められているといえるでしょう。
内部通報制度の通報内容には法律上の問題が関わるケースもあるため、時には専門家のアドバイスも必要となります。
場合によっては、社員が安心して通報できるように、顧問先の弁護士事務所とは別の弁護士事務所に社外相談窓口を設けるといった対応も必要になる場合もあるでしょう。内部通報制度の設計・運用に関わる方はぜひ一度弁護士にご相談ください。