知的財産権に関する法務は、企業法務の中でも重要な分野の1つです。この記事では、知的財産権関連のトピックの中から、とりわけビジネスとの関連性が深いものを解説します。
知的財産権の重要性
知的財産権は、企業にとっては競争力の源となる重要な財産です。それだけに、自社の持つ知的財産権を適切に管理し、また守っていくことは、企業の成長戦略にとっても大きな意味を持っています。
著作権を始めとする知的財産権は、差止請求権が認められるなど自社の知的財産を強力に保護してくれる権利です。しかし、そのことは一方で、万が一他社の知的財産権を侵害してしまったときのことを考えると、大きなリスクにもなりえます。
自社の知的財産を守ること、他社の権利を侵害しないこと。この2つを念頭に置いた上で戦略を立てることが、知的財産権問題に適切に対処するポイントです。
ここから先の段落では、主な知的財産権や不正競争防止法について紹介します。
著作権
著作権は、思想または感情を創作的に表現した「著作物」(著作権法2条1項1号)を対象とする権利で、具体的にはイラストや小説、音楽、地図などが含まれます。
著作権として認められる権利には、複製権や貸与権、譲渡権など作品の財産的価値を守る著作財産権、氏名公表権など著作者の人格や心情を保護するための著作者人格権などがあります。
商標権
商標権は、自社の商品やサービスを他社のものと区別するための「商標」、すなわち商品のロゴやネーミングなどを保護するための権利です。商標権を持つ登録の際に指定した商品やサービスについて、登録した商標を独占的に使用できるだけでなく、他人に勝手に利用されることも防止できます。
商標権は自動的に発生する権利ではなく、登録して初めて発生する権利です。したがって、商標登録をしていない商標があった場合、似たような商標が他社に登録されてしまえば、その時点で利用できなくなってしまいます。
意匠権
意匠権とは、簡単にいうと工業製品や衣服といった物品の「デザイン」を対象とした権利です。例えば、布地の柄やスマホのデザインといったものが該当します。
意匠権は商標権と同じく登録によって初めて発生する権利です。適切な時期に出願しておかないと後で問題になる可能性があります。
特許権
特許権は、新技術に代表される「発明」を保護するための権利です。この「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想のうち高度のもの(特許法2条1項)を指しており、「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」の3つの類型があります。一方、新たに発見した自然法則、さらにゲームのルールや法律といった人為的な取り決めは「発明」には該当しません。
特許権を取得するためには、商標権や意匠権などと同様に登録が必要です。
不正競争防止法
不正競争防止法とは、事業者間の不正な競争を防止し、適正な競争や公正な市場を確保するための法律です。
不正競争防止法の特徴は、特許権などのような登録を前提としておらず、たとえ登録していないケースでも、不正競争行為に該当すれば相手に差止請求や損害賠償請求が行える点です。
不正競争防止法における不正競争行為としては、すでに一定の知名度のある商品と同一、またはよく似た商品表示等を使った商品を作って市場を混同させる行為(周知表示混同惹起行為)などが挙げられます。
知的財産法の相談は弁護士に
知的財産権や不正競争防止法の分野に関わる業務を行う際には、専門的な知識が求められます。後の紛争を防止するためにも、ぜひ一度弁護士にご相談ください。